(岐阜県) 多治見市


織部といっても素地や釉薬、製法などの違いによって、青織部、総織部、志野織部、鳴海織部、赤織部、織部黒、黒織部といろいろな種類があります。この沓(くつ)茶碗は、銅緑釉を部分的に掛けて鉄絵を描いた、青織部と呼ばれるものです。
 


◎美濃は、日本の陶都
 美濃焼と聞いたら、どんなやきものをイメージしますか……。
 そういえば、デパートの美濃焼コーナーには志野、織部、黄瀬戸といった、いずれも日本の美を象徴するような器が並んでいて、これらのいわゆる「桃山風」といわれるやきものの生誕地がこぞって美濃であることに、改めて驚かされたりします。一方で、備前焼や唐津焼のように確固とした1つの美濃焼スタイルが浮かんでこないのも、また事実です。そしてこれが、美濃焼は“特徴がないのが特徴”といわれるゆえんでもあります。
 
 つまり、それほどに多彩な製品が焼かれているということ。たとえば美濃焼の伝統的工芸品を見てみましょう。志野、織部、黄瀬戸、瀬戸黒にとどまらず、灰釉、天目、染付、赤絵、青磁、鉄釉、粉引、御深井(おふけ)、飴釉、美濃伊賀、美濃唐津と、なんと15品目が通産大臣の指定を受けています。また、和食器、洋食器とも全国シェアの50%以上、タイルは50%近くが、実は美濃焼です。
 
 「桃山陶の故郷」と聞くと保守的でディープな茶陶の里をイメージしそうですが、どうやら“何でもござれ”的なたくましさも併せ持つのが現代の美濃の実像といえそうです。まさに、「日本の陶都」というキャッチフレーズがピッタリの一大産地なのです。
 
 ところで、美濃焼の名は旧国名の「美濃」という地名に由来します。現在の行政区分でいえば岐阜県の東濃地方に当たり、多治見(たじみ)市、土岐(とき)市、瑞浪(みずなみ)市、さらに可児(かに)市と土岐郡笠原町を含む広範な地域が生産地となっています。とくに、多治見はその中心です。名古屋から距離にして36km、JR中央本線や中央自動車道が走る交通拠点で中部経済圏の一翼を担う位置にあるためか、各生産地から焼き上がった製品が集まり商業地としてもにぎわっています。それだけに多くの施設やショップが充実していて、美濃焼探訪の拠点とすれば、やはり便利です。そこで今回は、多治見を中心に現在の様子を見ていきましょう。




美濃では、予約をすれば工房見学ができる窯元もあります。公営、私営の作陶施設も充実。
やきものの本場で、思いきり土と触れ合ってみましょう。
  


◎「セラミックパークMINO」がオープン
 多治見には、盃の市之倉、徳利の高田、碗や丼の滝呂といった、もともと分業生産をしていた街々があります。古くからの窯元もこの地区に点在していて、たとえば市之倉には、人間国宝の加藤卓男氏が6代目をつとめた幸兵衛窯(現在の当主は7代加藤幸兵衛氏)をはじめ、玉山窯、仙太郎窯、住吉窯など、老舗の窯元が軒を連ねています。高田地区にある水月窯は、人間国宝だった伝説的陶芸家・荒川豊蔵の子息らが主宰する窯元です。また、比較的駅近くにも、リーズナブルでセンスのある和食器を提案して注目株の蔵珍(ぞうほう)窯があったりします。窯元では工房見学ができたり展示室で販売もしていますが、予約が必要な場合も多く、あらかじめ問い合わせておくのが賢い方法です。

 予約なしでも楽しめるのが、市内随所にある器店です。スーパー並みの大店舗から粋な老舗風、モダンなギャラリー風まで、扱い作家や器の見せ方に店主のこだわりと愛情が感じられ、窯元とは違った興があります。若手や旬の作家情報を得るチャンスも巡ってきそうです。また、前畑陶器など量産メーカーのショールーム兼ショップが見受けられるのも、大産地ならではの風景といえるでしょう。さらに、岐阜県陶磁資料館をはじめとした、公営や私営のやきもの見学施設・体験施設の充実ぶりも見逃せません。

 そして、個人の陶芸家たちにいたっては多治見はもちろん、美濃全域に居を構えて創作活動を行っています。隣接する瀬戸が日展系なのに対し、美濃では圧倒的に伝統工芸系の作家が多く、その頂点にある人間国宝を現在2人も擁しています。そして、このリーダーたちの仕事の軌跡を通して、美濃の作家群像が少しだけ見えるような気がします。
 
 加藤卓男氏は、桃山陶の伝統を継ぐ名窯の当主でした。しかしながら、個人の作家としてペルシャ陶器への想いを作品に昇華させ、ラスター彩で国宝の認定を受けました。かたや、鈴木蔵氏の認定理由は、ガス窯による現代志野を創造したことによるものです。同じく志野・瀬戸黒の人間国宝だった荒川豊蔵が、桃山陶を当時の技法で再現しようとしたのとは対照的で、あくまで現代技法にこだわったところに作家の気概を感じます。

 さて、現在多治見市では、古田織部の斬新な精神=オリベイズムを掲げて、古いものを生かしながらの新しい町づくりが進められています。多治見橋からのびる本町筋と市之倉地区が、その中心スポットです。また2002年秋には、陶磁器文化をテーマにメッセ施設、美術館、作陶施設などを整備した、これまでに類を見ない大プロジェクト「セラミックパークMINO」が東町にオープン予定です。ここを会場に、国際的なコンペティションとして定着した「国際陶磁器フェスティバル美濃」の第6回展も開催されます。

 町中が活気づく2002年。陶都・美濃の探訪は、そろそろ“旬”を迎えています!
 


■ヴューポイント
 
●幸兵衛窯
 美濃を代表する名窯の1つです。1804年に開窯した幸兵衛窯は市之倉でもっとも長い歴史を持つ窯元で、当主は7代加藤幸兵衛氏。6代目が人間国宝・加藤卓男氏であることでも知られています。展示室は、200年前の民家を移築したという圧倒的な風格の本館と、モダンな新館に分かれています。まず、幸兵衛窯の窯物をもとめるなら新館の1階へ。織部、志野、赤絵、染付など、品のいい丁寧な作りの器に出会えます。2階は卓男氏の作品展示室になっています。また、ここで見逃せないのが古陶磁資料館です。美濃古陶をはじめ、卓男氏が収集したというラスター彩の陶片や完器、ペルシャ青釉や緑釉の資料、古代ガラス、青銅器など、千数百点ものコレクションはまさに圧巻。人間国宝の創作の軌跡に触れることができます。
 
◎住所/多治見市市之倉町4−124
◎TEL/0572−22−3821
◎営業時間/AM9:00〜PM5:00(正午〜PM13:00休館)
◎休業日/毎週日曜日、第2・第4土曜日、祝日
◎入館料/古陶磁資料館のみ有料 300円
 
※見学はあらかじめ予約が必要です。
 
●水月窯
志野と瀬戸黒の人間国宝だった故荒川豊蔵が、生前に建てた窯です。虎渓山の林に囲まれた雰囲気のある工房では、半地上式大窯と単室の登窯が今も現役で活躍。茶器や食器が、現在では珍しくなった昔ながらの方法で焼かれています。豊蔵ゆずりの温かく豊かさを感じさせる作風が、水月窯らしいと評判の窯元です。
 
◎住所/多治見市虎渓山町7−14
◎TEL/0572−22−1990
◎営業時間/AM10:00〜PM5:00
◎休業日/毎週日曜日、祝日

 
※見学はあらかじめ予約が必要です。
 


●蔵珍(ぞうほう)窯
 


赤絵牡丹文鉢


 多治見駅から車で5分ほどのところにある比較的新しい窯元です。「良質な食器を廉価で」提供しようというポリシーのもと、作られる器は伝統的でありながらどこかモダンな趣。価格もリーズナブルで、和食器の新興ブランドとして定着しました。磁器が主体ですが、とくに魯山人写しはこの窯のお得意。忘れずにチェックしておきましょう。また、重厚な長屋門のある古民家風の建物など、多治見の街なかでありながら、窯元の風情をたっぷりと味わえるのも魅力です。時間が限られている時などにもおススメです。
美術館
 
◎住所/多治見市太平町6−87
◎TEL/0572−25−6255
◎営業時間/AM9:00〜PM6:00
◎休業日/盆、正月

工房中庭
 



赤絵付
  

染付
  

ろくろ
  


●まるひら陶苑
 多治見駅から徒歩2分の便利な場所にあり、夜7時まで営業しているのも嬉しい陶器店です。中堅作家の食器を中心に、茶器・花入などの品ぞろえに地元でも定評があります。時折、お買い得品も! 老舗の陶器店が並ぶ「エルナードながせ」というアーケード商店街の入り口に位置しています。
 


多治見駅から数分の商店街「エルナードながせ」には、卸しと小売りを兼ねた陶器店が軒を並べています。窯元が集まるのは駅から少し離れたエリア。車かバスを利用しましょう。
 
◎住所/多治見市本町1−74
◎TEL/0572−22−0819
◎営業時間/AM9:00〜PM7:00
◎休業日/毎週水曜日
 
●井筒
 骨董店のようなしつらえの井筒は、「エルナードながせ」にある陶器店の1つです。格調ある雰囲気ですが、高級品ばかりでなく大家から中堅作家の器まで豊富に扱っています。店内には炉の切ってある小間もあり、和服姿の女主人のアドバイスを受けながら、ゆっくりと品定めができそうです。
 
◎住所/多治見市本町3−30
◎TEL/0572−22−2907
◎営業時間/AM10:00〜PM5:30
◎休業日/毎週水曜日、第3日曜日
 


●余白
 


 美濃在住の伝統的作家の作品を探すならここを訪れてみましょう。巨匠から新人まで扱っていて、なんと希望する作家の茶碗で(指定料:1000円)その場で抹茶を飲むことができるのです。また、この店がつとに有名なのは、遠方のファンも多いという懐石料理と、陶磁器の直しを良心的価格で請け負ってくれるから。徳利の町・高田地区にあります。
 
◎住所/多治見市虎渓山町7−11−4
◎TEL/0572−25−2005
◎営業時間/AM10:00〜PM8:00(PM5:00以降は要予約)
◎休業日/毎週水曜日
 


林正太郎 赤志野

加藤孝造 引出し黒ぐい呑


鈴木蔵 志野湯呑

加藤卓男 藍彩壺


■情報BOX
 
●澤千
 旧家の並ぶ本町筋にある澤千は会席料理の老舗です。山間の陶郷・美濃では川魚が美味ですが、ここでは名物のうなぎをはじめ多治見の季節の味を存分に堪能できます。もちろん器は地元作家の美濃焼。渋い店構えも興を惹き、多治見に来たら1度はのれんをくぐってみたい店の1つです。会席以外にも、肩の張らないうな丼などもあります。 
 
◎住所/多治見市本町5−24
◎TEL/0572−22−3115
◎営業時間/AM11:30〜PM2:30 PM5:00〜9:00
         (日曜・祝日はAM11:30〜PM9:00)
◎休業日/毎週水曜日
 
●老鰻亭 魚関
 明治30年創業という、うなぎと日本料理の老舗です。店名に銘打ってあるだけに、うなぎ料理にはこだわり有り。蒸さずにじっくり炭火で焼いた蒲焼きはクセになりそうな口当たりです。器は幸兵衛窯をはじめ上品な美濃焼に盛られていて、目でも味わえます。
 
◎住所/多治見市本町4−32−1
◎TEL/0572−22−5355
◎営業時間/AM11:00〜PM1:30 PM5:00〜9:00
◎休業日/不定休
 
(※なお、営業日、営業時間、料金などは予告なく変更される場合がありますので、お出かけの前にご確認下さい)


■美濃焼物語
 
◎昭和5年の大発見
 昭和5年(1930)、たった1つの陶片が、日本やきもの史上の“ナゾ”を解き明かすという大事件が起きました。のちに人間国宝となった荒川豊蔵による、「古志野筍絵陶片」の発見です。その日豊蔵は、3日前にある旧家で見た古志野茶碗とまったく同じ鉄絵の描かれた志野茶碗の破片を、美濃・大萱(おおがや)の窯跡で見つけ出します。それは、桃山の志野が美濃で焼かれた可能性を示す画期的な出来事でした。同時に、美濃焼にとって、輝かしい歴史を誇る幕開けとなったのです。
 
 陶片発見はまったくの偶然ではなかったといいます。瀬戸産といわれていた古志野茶碗を見た豊蔵は、高台に付着した土に見覚えがありました。それが生まれ故郷・美濃の土ではと見抜き、すぐに窯跡に赴き発見したというのですから、その慧眼と行動力、そして強運には驚かされます。その後の調査で、美濃一帯の窯場で桃山時代に志野が焼かれていたことが分かりました。続いて織部、黄瀬戸、瀬戸黒の古窯も発掘され、桃山陶が美濃産であることが立証されたのです。



美濃が陶都として発展したのは、良い土に恵まれたことも大きな理由。たとえば「志野」は、この地方特有の珪酸分を多く含む鳥屋根珪石の性質をうまく利用したものといわれています。
 それにしても、なぜそれほど長い間ナゾだったのでしょう……。豊蔵の発見まで古志野の窯跡は特定されていませんでした。志野をはじめ、桃山の陶器が瀬戸で焼かれたのではと推測されていたからです。そういえば、美濃焼なのに“黄瀬戸”、“瀬戸黒”と瀬戸の名が付くのも不思議に思えます。その謎解きには、美濃焼の歴史をもう少しさかのぼってみる必要がありそうです。


◎瀬戸焼と呼ばれたのは、なぜ? 
 美濃では古墳時代から須恵器が焼かれていたといいます。平安時代になると白瓷(しらし)と呼ばれた灰釉陶器が焼かれ、陶器産国として知られるようになりました。平安中期の律令の施行細則だった『延喜式』にも「陶器調貢の国」と定められたほどです。そして、鎌倉〜室町時代の無釉陶器、いわゆる「山茶碗」の生産へとつながっていきます。
 
 一方、室町後期の16世紀になると、鎌倉時代以降中国のやきものを模倣して施釉陶を焼いていた瀬戸の窯が戦国の戦乱を避けてしだいに移動し、美濃の地へやって来ました。現在の多治見市、可児市、笠原町付近です。これによって美濃では瀬戸仕込みの施釉陶器が生産されるようになり、安土・桃山時代の茶陶の隆盛へと突き進んでいったのです。
 
 こんな事情があったため、美濃で焼かれた施釉陶器も一般には瀬戸焼と呼ばれて流通していました。それに当時は「美濃焼」という窯名も存在せず、そう名乗るようになったのは江戸後期〜明治期とずっと後のこと。瀬戸黒、黄瀬戸という名前の由来も、どうやら、こんなところにあったようです。
 
 さて、日本の陶芸史に燦然と輝く桃山茶陶の時代、数々の名品はこの美濃の地で、いったいどのように生まれたのでしょう……。そもそも茶の湯の権威・千利休が、自身の侘び茶の理念を反映させた茶碗を、京都の陶工・長次郎に作らせた(1580年頃)ことが始まりでした。茶の湯の世界ではそれまでの唐物茶碗から一斉に創作物の茶碗へと流行が移り、それに素早く反応したのが美濃の窯場だったといわれています。
 
 つまり長次郎の黒茶碗からヒントを得て、「瀬戸黒」を誕生させたのです。これは、鉄釉を施した茶碗を焼成中の窯から釉薬が熔けている最中に引き出し、急冷して一挙に酸化させて漆黒の釉を得たもので、「引出黒(ひきだしぐろ)」とも呼ばれています。長次郎の黒楽茶碗とは異なる製法によるもので、当時の創意工夫には本当に驚かされます。続いて志野釉、黄瀬戸釉を開発し、やがて緑釉と鉄絵を組み合わせた「織部」が生まれました。今に語り継がれる桃山陶芸の黄金期です。この創造のパワーはまったく圧倒的でした。
 
 ところが17世紀の後半になると、これほどの桃山陶がやきもの史上から忽然と消えてしまいます。茶の湯の流行が変わり、また肥前生まれの国産の「染付」がもてはやされるようになって衰退したと一説にいわれています。当時を記録した文献もなかったことから、明治期に茶の湯が復興して桃山陶が再評価されるまで、その生産地さえも忘れ去られていきました。これら一連のいきさつがあって、桃山陶は明治期になっても瀬戸焼と漠然と信じられていました。美濃焼であることを立証した荒川豊蔵の陶片発見が衝撃的だった理由は、ここにあったのです。
 
 さて、桃山茶陶が消えても、美濃焼は日常雑器を焼く窯として続いていました。江戸時代には美濃青磁と呼ばれた「御深井」も生まれています。やがて江戸後期になって磁器の生産がはじまると、陶器から磁器へと急速に転換。近代化の波に乗って、明治〜昭和へと続く大窯業地への礎を築いていきました。
 
 現在は、名実ともに「陶の都」と呼ばれる美濃。時代をとらえる開放的な気風とダイナミックな対応力は、桃山以来の美濃の窯場に、今も確かに息づいています。


■ヴューポイント
 
●岐阜県陶磁資料館
 美濃焼の産地・多治見市、土岐市、瑞浪市、笠原町の3市1町運営の財団法人が経営する東濃地方最大のやきもの資料館です。所蔵品は約5万点。館内は、美濃焼千年の流れ展示室、桃山展示室、磁器展示室、現代陶展示室、企画展示室の5セクションに分かれ、古代から現代まで、貴重な品々をたどりながら美濃焼の全容に触れることができます。とくに志野、黄瀬戸、織部、瀬戸黒などの桃山陶を知りたいなら、ぜひ訪れたいところ。年に4、5回が開かれる企画展も好評です。茶室では抹茶サービス(有料)もあります。
  
◎住所/多治見市東町1−9−4
◎TEL/0572−23−1191
◎開館時間/AM9:30〜PM4:30
◎休館日/月曜日、祝日の翌日、年末年始
◎入館料/大人300円
 
●多治見市陶磁器意匠研究所
 陶磁器産業の振興のために多治見市が運営する試験・研究機関で、通称“意匠研”と呼ばれています。と、ここまではどこの産地にもある施設のようですが、意匠研が特異なのは、全国から陶芸を志す若者が集まる人気の人材育成機関であること。OB、OGにはプロとして活躍する陶芸家や陶磁器デザイナーも多く、注目されています。ここでは、絵付の技法、デザインなどの最新テクニックを見学できます。
 
◎住所/多治見市美坂町2−77
◎TEL/0572−22−4731
◎開館時間/AM9:00〜PM4:30
◎休館日/土・日曜日、祝日、年末年始
◎入館料/見学無料(※多人数の場合は予約が必要です)
 
●根本連房式登窯
 美濃地方に残る貴重な磁器の古窯跡。ここで焼かれた精緻な染付磁器は「根本焼」と呼ばれて明治期に頂点を極めましたが、この登窯を最後に途絶えています。美濃周辺には確認されているだけで1000カ所もの古窯跡があるといわれますが、ここは多治見市の文化財に指定されていて、一見の価値あり。美濃焼の栄華の一端を感じさせてくれます。
 
◎住所/多治見市根本町
 
●駅前広場のモニュメント
 多治見では市内のあちこちで地元陶芸家の手による陶のモニュメントに出会えます。まずJR多治見駅を降りると待合室に陶壁、駅前広場には人間国宝・加藤卓男氏や鈴木蔵氏らのオブジェが設置されています。また土岐川の河川敷はタイルで加飾され、橋の上には織部焼のモニュメントがあったりして、まるで野外ギャラリーのようです。器探しの合間にも、どうぞ、お見逃しなきように。
 
●オリベストリート
 多治見では今、古いものを活かした新しい町づくりが進められています。コンセプトは、古田織部の斬新な精神性=オリベイズム。その開発エリアが、やきもの都市・多治見の歴史を色濃く残す本町筋です。オリベストリートと名付けられた約400mの通りには、明治初期から昭和初期に建てられた商家や蔵に交じって個性的な店舗が並びつつあります。中心のたじみ創造館には、観光情報も得られるPRセンターや、ギャラリー、体験工房などがあります。多治見駅から徒歩15分。バスなら多治見橋下車、徒歩1分。
 
◎住所/多治見市本町
 


●前畑陶器ショールーム
 美濃には、大産地らしく、全国区の陶磁器メーカーがいくつかあります。その1つが陶都大橋近くにある前畑陶器(株)です。テーマ別にコーディネイトされた器が3フロアに及ぶ展示スペースに並ぶさまは、まさに壮観。磁器の洋食器なら、これぞ! と思うものにかならず出会えそうです。量産品だけに、価格もお手ごろです。
 


市の中心部を流れる土岐川の流れ。堤防には桜並木があって、お花見シーズンには人気の観光スポットになります。ここに架かる陶都大橋や多治見橋は、散策の起点として覚えておくと便利です。
◎住所/多治見市前畑町2−12
◎TEL/0572−24−1111
◎営業時間/AM10:00〜PM5:30
◎休業日/日曜日、祝日、土曜日不定休


●美濃焼卸センター・美濃焼スクエア
 約50軒もの陶磁器卸会社が集まっています。卸センター直営のショールームもあり、新作や試作品が見られるほか、日用の和洋食器から作家物まで網羅的に製品をそろえています。またここは、毎年10月に行われる「たじみ茶碗まつり」の会場としても有名。建物の2階には上絵付工房も併設されています。
 
◎住所/多治見市旭が丘10−6−33
◎TEL/0572−27−2889
◎営業時間/AM10:00〜PM5:30
◎休業日/年末年始
 
●花御堂
 多治見の器シーンの“今”を代表するようなショップ&ギャラリーです。場所は、最近の注目エリア・オリベストリート近く。蔵をイメージしたおシャレな建物には、オリジナル食器が中心のショップ「うつわ花御堂」、陶芸・布・ガラス・版画などの企画展が開かれる「ギャラリーやまぼうし」、そして、併設のレストラン「櫻」では、和食器に盛られたフランス料理が堪能できるという仕掛けです。実際の器使いをイメージしやすいので、選ぶのも楽しそう。作家物も展示しています。
 
◎住所/多治見市本町6−2
◎TEL/0572−25−5600
◎営業時間/AM10:00〜PM6:00
◎休業日/毎週月曜日
 


●虎渓山永保寺
 虎渓山は、中国・廬山の虎渓の渓谷美に似ていることから名付けられたといわれる景勝地です。その自然林に建つ永保寺は、約680年の歴史を持つ臨済宗南禅寺派の名刹。日本3名園の1つという池泉回遊式庭園や、国宝の開山堂、観音堂は見応え充分です。そしてやきものファンなら、陶製の織部灯籠はやはり見逃せません!
 
◎住所/多治見市虎渓山町1−42
◎TEL/0572−22−0351
◎開山時間/AM5:00〜PM5:00
◎拝観料/無料
 




虎渓山永保寺の回遊式庭園は国の名勝にも指定されています。
その風情も見事ですが、
やきものファンなら織部焼の大灯籠を、どうぞお見逃しなきように!


●神言会多治見修道院
 日本3大修道院の1つが、ここ多治見にあります。1930年、神言会の日本管区総本部としてドイツ人モール神父によって建てられました。見どころは、バロック建築の建物、大聖堂天井のフレスコ画、壁画、ステンドグラスなど、異国情緒にあふれたものばかり。修道士手作りのワインやクッキーも人気で、目先の変わったお土産になりそうです。
 


十字架の建つ塔が目を引く神言会多治見修道院は、定番の観光スポットです。フレスコ画、ステンドグラスなど内部はとても神秘的。美濃焼の純日本と異国情緒の組み合わせは、なかなか刺激的な旅になりそうです。
◎住所/多治見市緑が丘38
◎TEL/0572−22−1583
◎開館時間/AM9:00〜PM4:00(礼拝堂の一部のみ見学できます)
◎閉館日/毎週月曜日、年末年始
 


■情報BOX
 
●多治見陶器まつり
 多治見陶磁器卸商業協同組合が主催し、多治見橋からオリベストリート付近に80店あまりの露店が出店します。さすが陶都のやきもの祭りだけあって、一般の和洋食器はもちろん、業務用、割烹用、デザイナーズ・ブランドものまで、ほとんどの器が見つかりそう。2日間で12〜13万人の人出というのもうなずけます。市価の2〜5割引きだから、この機会に組物などを手に入れるのも、賢い買い方かもしれません。
 
◎問い合わせ先/多治見市農林商工課
◎TEL/0572−22−1111
◎場所/多治見橋〜市役所付近
◎期日/毎年4月第2土・日曜日
 



多治見では年に2度の陶器祭が開かれます。春の「多治見陶器まつり」(4月)を見逃しても、
秋の「たじみ茶碗まつり」(10月)で掘り出し物が待っているかもしれません!


●たじみ茶碗まつり
 こちらは秋の陶器祭。かつて美濃焼団地まつりといわれていたのが改名したもので、春の「陶器まつり」と同様、茶碗ばかりでなく美濃焼なら何でもそろいます。出店は60店舗以上、人出も10万人以上と大盛況。県外からも多くの美濃焼ファンが詰めかけます。
 
◎問い合わせ先/多治見市農林商工課
◎TEL/0572−22−1111
◎場所/美濃焼卸センター

 
●体験施設 遊陶里工房
 ビギナーにもお勧めの市営の作陶施設です。指導員の丁寧なアドバイスには定評があるので、まったく土に触ったことがなくても安心。手びねり、ろくろ、タタラなど、いろいろな成形方法にチャレンジできます。形作りが済めば、好みの釉薬を掛けて焼き上げてくれます。織部、黄瀬戸、志野などがチョイスできるのは美濃ならでは! 完成までに2〜4ヵ月かかっても、自作を手にした喜びはひとしおです。希望者には発送もしてくれます。
 
◎住所/多治見市東町1−9−17(安土桃山陶磁の里内)
◎TEL/0572−25−2233
◎営業時間/AM9:30〜PM4:30
◎休業日/毎週月曜日、祝日の翌日、年末年始
◎料金/1300円
 
※予約が必要です。
 
●体験施設 ギャラリーO(オー)工房
 オリベストリートにあるたじみ創造館3Fにオープンした市営のギャラリー&体験工房です。ギャラリーOでは陶芸展、絵画展などさまざまな企画を開催。多治見の新しい才能に出会えるチャンスかもしれません。また、気軽に上絵付が楽しめるのがO工房です。本焼後に描き、再び焼成が必要な上絵付はややハイレベルな技法。なかなか挑戦しにくいものです。でもここなら準備されたマグカップや洋皿の白生地に描くだけでOK。約2週間待って、焼き上がりを受け取る気分は格別です。希望すれば郵送もしてくれます。
 
◎住所/多治見市本町5−9−1 たじみ創造館3F
◎TEL/0572−23−9901
◎開館時間/AM10:00〜PM8:00(※上絵付の受付はPM7:00まで)
◎休館日/毎週水曜日、年末年始
◎上絵付料金/500円〜
 
●体験施設 虎渓窯・陶芸道場
 陶芸家が主宰する窯に併設された作陶施設です。虎渓公園に近く、緑に囲まれた工房は趣があり作陶の雰囲気を盛り上げてくれそうです。永保寺や修道院が徒歩圏内という観光のロケーションの良さも、ここの特徴。虎渓窯の展示室では、ショッピングも楽しめます。
 
◎住所/多治見市虎渓山町2−29
◎TEL/0572−22−0129
◎営業時間/AM9:00〜PM5:00(12〜1:00は休憩)
◎休業日/毎週火曜日
 


■アクセス
 
◎電車/名古屋駅からJR中央本線多治見駅まで、快速でおよそ30分。
◎マイカー/中央自動車道多治見ICから。東京から約5時間30分。大阪から約2時間30分。
 


■総合問い合わせ先
 
多治見市役所農林商工課/TEL.0572−22−1111
 
多治見市観光協会/TEL.0572−24−6460
 
多治見市PRセンター/TEL.0572−23−5444
 
岐阜県東京事務所六本木センター/TEL.03−5771−5221
 
http://www.city.tajimi.gifu.jp/
http://www.tajimi.com/
http://www.minoyaki.gr.jp/
 
写真協力:多治見市役所農林商工課



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