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−−花入のなかでも、掛け花入は使われ方が独特で、なんだかとても個性派の茶道具、という感じがしていました。
 やはり、これももともとは茶人が考え出したものなのでしょうか?

安藤●花入を用途別に分類すると、置く、掛ける、釣るに三大別できます。 そして花入はそのほとんどが、床の間に置くものとして定着していました。
 それが掛けて使われるようにもなり、利休が竹の花入を考案してからは、それが掛け花入の主流になっているほどですよ。

−−当然ですが、他の茶道具に比べれば、掛けたり、下げたりと、花入はずいぶん柔軟な使われ方をしてるような気がしてしまいます・・・。

安藤●時折、古い花入を拝見していると、後から掛け花用の吊環をつけるための穴を空けたものがあるのに気がつきます。 そのことからも、最初から掛け花入として使ったものばかりではないのだと分かりますね。 それから、今では信じられないのですが、伊賀のような重みのある花入でも、穴を空けて掛けられるように細工したのもあったようですよ。
 たとえば「生爪」という名品があります。 やや小振りの、ずんぐりとした伊賀の筒形花入です。かつては古田織部が愛蔵したものといわれ、後に上田宗箇にこれを譲ります。 その際、この花入を譲るのは「つめをはかし候やうに在候」と織部が書状にしたためたことから、「生爪」の銘がつけられました。
 この花入には正面上部に穴を埋めた跡があり、それに代わって背面に吊環がつけられ、掛けられるようにしてあります。

−−そうお聞きすると、少し強引なようにも感じたりしますが、そうしてまでも、掛けて使いたい花入があったということです・・・ね。

安藤●もちろん現在では、あまりに重く、掛けて使うのが相応しくないものは穴を塞ぎ、置いて使うことも多いようです。
 そのように、花入を掛けて使うのが流行した時代もあったのではないか、と思われています。
(構成・編集部)





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