インターネット版 No.31  全3ページ 1 | 2| 3

1 ・特集 九炉土流「蓋物」とは? ・・・ 第22回 「陶房九炉土会員作陶展」より (1)
2 ・特集 九炉土流「蓋物」とは? ・・・ 第22回 「陶房九炉土会員作陶展」より (2)
3 ・HOTLINE ・・・ 来年度の九炉土展 テーマは「おもてなしの器」
・TOPICS ・・・ 陶芸指導プロ養成塾の卒業生に卒業証書授与
・BOOK ・・・ 「はじめての茶の湯」

1/3ページ

                             ふ た も の
 九炉土流「蓋物」とは?
 
「第22回 陶房九炉土会員作陶展」より
  
「蓋物」は急須やポット、土鍋に水指、香合など、意外に身の回りにたくさんあります。 今号では、そんな「蓋物」作りの知恵とヒントを、「九炉土会員作陶展」の出品作のなかから紹介したいと思います。






落とし蓋
この土鍋や飯碗のように、蓋が本体(ボディー)の口縁内部に落ち込んでいるものをいいます。 ただし、飯碗など直接口にする器種の場合、本体に蓋をのせるための歯をつけたり、その部分だけ施釉しないと実用的でなくなり、美観もよくありません。 そのため、このように端反に蓋がのるように作ります。


山蓋
盛蓋ともいいます。 この作品のように蓋の中央が山形に盛り上がっているものをいい、一般的に蓋の内側に歯がついています。 また作例のような蓋物のほか、土瓶、水差し(ピッチャー)などでもよく用いられる手法です。


切合わせ蓋
蓋と本体とに切り分けて合わせています。 この作品では、数カ所を山型に切って凹凸を明確につけ、蓋とボディーがズレないよう工夫を施しています。


    
合わせ蓋
このような香合や盒子に多く見られます。 半乾きのときに蓋部と本体部にカットし、内部を掻きベラで刳り貫きます。 蓋側は薄くし、本体側の口元をやや厚く残すと、ズレ止めの歯がしっかりとつけられ、しかも蓋がうまくかぶさります。



大満足の「蓋物」作り
 「あなたはこの筥のなかに、なにを入れるのですか?」と問われて、「夢を!」と答えた造形作家がいました。
 蓋をすることによって、内部に閉ざされた空間を保つ「蓋物」は、どこかロマンチックで、不思議な器です。 ところが、いざ蓋物を作るとなると、急に戸惑い、思案してしまう方も多いとか。 それでまず、どんな種類の蓋物があるのか、実際に九炉土展の会場に行って観察してみましょう。 今年度の本展の共通テーマは、「蓋物」です。
 すると会場には、想像以上の種類の蓋物作品が、ズラリと勢揃いしていて、驚きました。 器種別にざっと挙げると、ティーポット、水指、飯碗、急須、香合、陶筥、菓子鉢、土鍋、向付、飾り壺、漬け物鉢、照明器具・・・などなど実に多様です。
 一般的に蓋物というと、どうしても種類が固定化されてしまい、しかも技術的に難しいことから、あまりテーマに選ばれないような気がしていました。 ところが、九炉土展への出品作を見ていて、それは単なる思い込みとわかりました。 作者の皆さんが本当に自由に、そして、楽し気に作陶する様子が、作品から伝わってくるからです。
 しかも発想、技法、造形、装飾と、なにをとっても画一的なものはありません。 また個々の作品の質は、いずれも高レベルに保たれていました。
 堂々たる陶筥の大作を出品していた作者は、こういう蓋物作品になると、正直にいって、制作途中で技術的な問題に直面することもある、といいます。
 「でも、なにを作りたいかという目的がはっきりしていますし、先生からは的確なアドバイスが頂けて、安心なんです」と、作品を前に、大満足といった様子。
 別の出品者に尋ねても「想像以上に蓋物作りは楽しいですよ。 とにかく、作り甲斐があるテーマですネ(笑)」といいます。
 それにしても、一見難しそうな蓋物作りが、なぜ、こんなにも楽しいのでしょうか? 



落とし蓋
このティーポットやシュガーポットの蓋は、本体(ボディー)の口縁内部に蓋が落ち込んでいる様式。 典型的な落とし蓋の作例です。


切合わせ蓋
左上のモダンな作品は、切り口をデザインとしても活かしながら、蓋と本体とに切り分け、合わせています。 上と左の陶筥作品は、波打たせながらカットし、さらに切り口を斜めにする(矢筈口)ことによって、蓋のズレ止めになっています。



応 用 編
被せ蓋(応用)
蓋と本体(ボディー)の関係が逆転してしまったかのような個性的な作品です。 これももちろん蓋物といえます。
被せ蓋(応用)
この蓋物作品も、蓋が強く存在感を主張しています。 被せ蓋を応用した愛らしい作例です。
落とし蓋(応用)
船(ゴンドラ)の中央部に被せられた蓋が、本体(ボディー)の口縁内部に落ち込む構造になっています。 この作品も蓋物です。


《九炉土流「蓋物」とは?  ・・・P2へ続きます》



1ページ | 2ページ | 3ページ
tougeizanmai.com / バックナンバー